東京のリミナルスペース|駅の地下通路から屋上の観覧車まで、実在する8か所
東京には、駅と駅、ビルとビルをつなぐ通路がどこまでも続き、昭和の娯楽のための建物が今も営業しています。人の少ない時間に歩くと、見慣れたはずの場所が急に知らない場所に見える。LIMapに登録した、誰でも行ける8か所と、映画『バックルームズ』の公開に合わせて東京に現れた2つの空間を紹介します。
東京のリミナルスペースは「乗り換えの途中」と「昭和の娯楽」に多い
東京の地下には、駅と駅、ビルとビルをつなぐ通路が網の目のように張り巡らされています。そのほとんどは、目的地へ向かう途中に通り過ぎるためだけの場所です。朝夕は人で埋まる通路が、早朝や夜遅くには急に静かになる。この落差が、東京のリミナルスペースの大きな特徴です。
もうひとつは、昭和に建てられた娯楽の場所が、今も現役で使われていることです。地下の飲食店街、映画館とボウリング場の入ったビル、デパートの屋上の遊園地。新しい街並みのすぐ隣で、時間の流れ方だけが違って見えます。
東京駅の地下深く:京葉線ホームへの長い通路
東京駅の京葉線ホームは、ほかの乗り場から大きく離れた地下深くにあります。1990年3月の京葉線の乗り入れにあたって、もともと成田新幹線の駅として計画され、1983年ごろに工事が止まっていた地下の空間が使われたためです。乗り換えには、動く歩道の並ぶ「ベイロード」と呼ばれる連絡通路を延々と歩くことになります。
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同じ景色の続く通路を、動く歩道に運ばれていく時間は、まさに「どこかへ向かう途中」そのものです。通勤の波が引いた夜遅くや休日の早朝には、人の気配がほとんど消えます。
丸の内と汐留:オフィス街の地下を歩く
丸の内の行幸通りの地下を、東京駅から皇居の方向へまっすぐ延びるのが行幸地下通路です。1960年に完成した地下駐車場を改修して、2007年に歩行者のための通路になりました。壁沿いに並ぶガラスのショーケースは「行幸地下ギャラリー」と呼ばれ、全長約220mにわたって展示が続きます。円柱の並ぶまっすぐな通路は、休日の朝にはほとんど人が通りません。
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新橋から汐留の高層ビル街へは、地上、地下、2階の歩行者デッキの3つの道があります。その地下にあたる汐留シオサイトの地下歩道は、JR新橋駅の汐留口から都営大江戸線の汐留駅まで地下でつながっています。頭上の華やかなビル街とは対照的に、コンクリートと照明だけの通路が続きます。
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昭和が残る場所:浅草地下街とロサ会館
浅草地下街は、1955年に開業した地下の商店街です。戦後に造られた地下街としては、今も残っているもので日本最古とされています。東京メトロ銀座線の浅草駅の改札を出てすぐのところに入口があり、全長50mほどの低い通路に、飲食店や理髪店が並んでいます。浅草の観光の賑わいのすぐ下に、まったく違う時間が流れています。
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池袋西口のロサ会館は、1968年に開業した総合アミューズメントビルです。1946年に開業した映画館シネマ・ロサを前身とし、今もボウリング場、ゲームセンター、ライブハウス、飲食店が入っています。入り組んだ通路と古い案内表示が、昭和の娯楽ビルの空気を伝えています。池袋西口の再開発の区域に含まれていて、いずれ建て替えが予定されています。
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屋上の観覧車と、湖のほとりのロープウェイ跡
蒲田駅前の東急プラザ蒲田の屋上には、1968年から続く小さな遊園地「屋上かまたえん」があります。都内で唯一の屋上観覧車「幸せの観覧車」は3代目で、2014年に一度は撤去される予定でしたが、存続を望む声を受けて、改装後に再び設置されました。駅前の雑踏を見下ろしながら、ゆっくり回るゴンドラに乗る時間は、どこか現実から浮いています。
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奥多摩湖のほとりには、1962年に開業した奥多摩湖ロープウェイの跡が残っています。1966年の冬に「冬季休業」として運行を止めたまま、再開されることはありませんでした。川野駅の跡には、今もゴンドラが残されています。立入禁止で崩れる危険もあるため、近づかず、離れた場所から眺めるだけにしてください。
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夜の地下通路と、映画が東京に作った「バックルームズ」
東京ドームシティでは、2003年に開業したラクーアへ続く地下通路が、閉店間際の人の少ない時間に、独特の色づかいとこもった空気で、別の場所のような表情を見せます。LIMapに投稿された写真から、その雰囲気をのぞいてみてください。
東京ドームシティ ラクーアへ続く地下通路
2026年9月4日に映画『バックルームズ』が日本で公開されたときには、東京に期間限定の「バックルームズ」が2つ現れました。池袋のサンシャインシティ展示ホールAでは、体験型のイベント「Q LIMINAL」が9月11日から20日まで開かれました。赤坂では、雑居ビルの2階の空室を使って、劇中の空間を実物大で再現した展示が9月1日から13日まで、ガラス越しに見られました。どちらも会期は終わっていて、赤坂の部屋は今は普通の賃貸オフィスの空室なので、訪ねるのは控えてください。
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行くときの、現実的な注意点
駅の通路や地下街、商業ビルは、お店や通る人の生活の場です。撮影するときはお店や人の顔が写らないように気をつけ、三脚を立てたり、通行の邪魔になったりしないようにしてください。地下通路には、通れる時間が決まっているところもあります。屋上かまたえんは10時から18時まで(冬は17時まで)で、荒天のときや熱中症警戒アラートが出ているときは観覧車などが休止になります。
奥多摩湖ロープウェイの跡のように、使われなくなった施設は立入禁止です。柵や看板の内側には入らず、外から眺めるだけにしてください。なお、ゲーム『8番出口』の異変のモデルになった清澄白河駅の不揃いな照明は、2025年から2026年にかけてのLED化工事で取り外されています。
撮ったら、地図に残してください
東京には、まだ記録されていない通路や古い建物がたくさんあります。毎日通る乗り換えの通路が、誰かにとっての探していた景色かもしれません。映画をきっかけに興味を持った人は、「映画を観たあとに行きたい、東京の『バックルームズ的』な場所」もあわせて読んでみてください。
LIMapは、そうした場所を写真と位置つきで残していく地図です。見つけた場所があれば、ぜひ登録してください。
よくある質問
東京で手軽にリミナルスペースを感じられる場所は?
東京駅の京葉線ホームへ続く長い連絡通路や、丸の内の行幸地下通路は、駅から直接行けて、通るのにお金もかかりません。人の少ない早朝や夜遅く、休日の朝がおすすめです。
清澄白河駅の『8番出口』のような照明は今も見られますか?
見られません。不揃いに並んでいた照明は、2025年から2026年にかけてのLED化工事で取り外され、今は天井に跡が残るだけです。
映画『バックルームズ』の展示やイベントには今も行けますか?
サンシャインシティの「Q LIMINAL」(2026年9月11日〜20日)も、赤坂の実物大の展示(9月1日〜13日)も、会期は終わっています。
この記事が、あなたの知らない場所への入口になっていれば幸いです。
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