北関東のリミナルスペース——地下の採掘場跡から県庁の最上階まで、実在する9か所

茨城・栃木・群馬には、計画都市の沈んだ広場や、石を掘り出したあとの巨大な地下空間、夜遅くまで無料で開いている県庁の最上階が、今も誰でも行ける場所としてあります。人の少ない時間に訪れると、使い道の分からない広さと静けさだけがそこに残っています。LIMapに登録した9か所を紹介します。

大谷資料館の地下空間。薄暗い照明の中に石の壁が続く
大谷資料館の地下。約70年かけて掘られた石の空間が、奥へ奥へと続く。 写真: 掬茶 (CC BY-SA 4.0), 出典: Wikimedia Commons

北関東のリミナルスペースは「人工的な建築」と「役目を終えた線路と地下」に多い

北関東で見つかるリミナルスペースには、二つの特徴があります。ひとつは、計画都市や公共建築の人工的な空間です。研究学園都市の広場、幾何学だけでできた塔、夜遅くまで開いている県庁の最上階。人の少ない時間には、誰のために用意されたのか分からない空間だけが残ります。

もうひとつは、役目を終えたあとも残された線路や地下空間です。石を掘り出した跡の地下、廃線になった鉄道の橋とトンネル、線路のなくなった駅のホーム。この記事では、茨城・栃木・群馬で「今、誰でも行けること」を条件に選んだ場所を紹介します。

茨城:沈んだ広場と、ねじれた塔

つくばセンター広場は、筑波研究学園都市の中心に1983年に完成したつくばセンタービルの広場です。設計は磯崎新で、ローマのカンピドリオ広場を反転させ、周りより一段低く沈めた楕円形の広場の中心に噴水を置いています。イベントのない平日の早朝や雨の夜には、石の階段と壁に囲まれた広場に、ひとりだけ取り残されたような静けさが訪れます。

水戸芸術館の塔は、1990年に完成した高さ100mの塔で、同じく磯崎新の設計です。正三角形のチタンのパネルをねじるように積み上げた、らせん状の形をしています。ガラス張りのエレベーターで上がる地上86.4mの展望室は定員19名の小さな部屋で、小さな窓から街を見下ろすと、幾何学の中に閉じ込められたような気分になります。

栃木:地下の神殿と、夜の県庁

宇都宮の大谷資料館は、1919年から1986年まで約70年かけて大谷石を掘り出した跡の地下空間です。広さは約2万㎡、深いところで地下60mに達し、坑内は1年を通して8℃前後に保たれています。直線で切り出された巨大な石の壁と柱が薄暗い照明の中にどこまでも続き、地底に置き忘れられた神殿に迷い込んだような空間になっています。

2007年に完成した栃木県庁本館の15階には、回廊式の展望ロビーがあります。地上約65mのガラス張りの廊下が建物をぐるりと囲み、平日も休日も夜9時まで無料で開放されています。閉庁後、人のいない役所の廊下から宇都宮の夜景を眺める時間は、少しだけ現実から外れた場所にいるように感じます。

群馬:153mの県庁と、照明を落としたホール

前橋の群馬県庁は、1999年に完成した高さ153.8mの庁舎です。32階の展望ホールは地上127mのフロア全体が無料で開放され、夜10時まで入れます。人のいない夜のフロアから上毛三山と関東平野の灯りを見下ろしていると、役所の中にいることを忘れてしまいます。

高崎の群馬音楽センターは、1961年に完成したアントニン・レーモンド設計の音楽ホールです。建設費3億円のうち1億円を市民の寄付でまかない、屏風を折ったようなコンクリートの構造で、柱のない大きな客席を覆っています。催しのない見学日には、照明を落としたままの誰もいない客席とロビーを歩くことができます。

群馬音楽センターの外観。屏風を折ったようなコンクリートの壁
群馬音楽センター。1961年に完成した、レーモンド設計のホール。 写真: Wiiii (CC BY-SA 3.0), 出典: Wikimedia Commons

役目を終えた線路:めがね橋から熊ノ平へ、真壁駅跡のホーム

群馬県安中市の碓氷第三橋梁、通称めがね橋は、1893年に完成した旧信越本線のレンガ造りのアーチ橋です。長さ91m、川底からの高さ31mで、約200万個のレンガが使われています。廃線になった線路跡は、横川駅から熊ノ平駅跡までの約6kmが遊歩道「アプトの道」になり、橋の上やいくつものトンネルを歩いて抜けられます。終点の熊ノ平駅跡には、苔むしたホームや変電所の建物、トンネルの坑口が残っています。

茨城県桜川市の真壁駅跡は、1987年に廃止された筑波鉄道の駅の跡です。線路は撤去されましたが、ホームはそのまま残され、今はサイクリングロード「つくば霞ヶ浦りんりんロード」の休憩所になっています。列車の来ないまっすぐな道の途中に、ホームだけが静かに残っています。

行くときの、現実的な注意点

県庁の展望室は、今も人が働く役所の中にあります。職員や来庁者、併設のカフェの利用者を写さないように気をつけてください。群馬音楽センターの館内を見学できるのは、催しのない指定日だけです。行く前に高崎財団のサイトで見学日を確認してください。

大谷資料館の坑内は1年中寒いので、夏でも上着を持っていきましょう。アプトの道のトンネルの照明は7時から18時までなので、暗くなってからは歩かないでください。水戸芸術館の塔は、悪天候の日は上れないことがあります。

撮ったら、地図に残してください

北関東には、まだ記録されていない計画都市の広場や、役目を終えた線路の跡がたくさんあります。いつも通る駅前の広場も、早朝に歩くと別の場所に見えるかもしれません。

LIMapは、そうした場所を写真と位置つきで残していく地図です。見つけた場所があれば、ぜひ登録してください。

よくある質問

夜に行ける場所はありますか?

栃木県庁の15階展望ロビーは夜9時まで、群馬県庁の32階展望ホールは夜10時まで、どちらも無料で開いています。つくばセンター広場は屋外の広場で、いつでも入れます。

無料で入れる場所はありますか?

つくばセンター広場、栃木県庁と群馬県庁の展望室、アプトの道、真壁駅跡は無料です。水戸芸術館の塔は大人200円、大谷資料館は大人1,000円です。

群馬音楽センターの中はいつでも見られますか?

館内を見学できるのは、催し物や点検のない指定日だけです。見学できる日は高崎財団のサイトで案内されています。建物の外観はいつでも見られます。

気になるリミナルスペースを見つけたら

写真と場所をLIMapに記録して、同じ感覚を持つ人たちと共有しましょう。

LIMapで地図を見る

この記事が、あなたの知らない場所への入口になっていれば幸いです。
LIMapの運営を支援する(Ko-fi)→