静岡・東海のリミナルスペース——光のエスカレーターから昭和の駅舎まで、実在する8か所

静岡・岐阜・三重には、山の中を延々と上っていく光のエスカレーターや、平衡感覚がずれていく体験型の作品、伊勢参りの人の波が引いた昭和の駅舎が、今も誰でも行ける場所としてあります。人の少ない時間に訪れると、現実から少しだけずれたような場所の静けさが見えてきます。LIMapに登録した8か所を紹介します。

山を背にした養老天命反転地。すり鉢状の地面に通路と建物が広がる
養老天命反転地。すり鉢状の地面に、傾いた壁や曲がりくねった通路が広がる。 写真: おはぐろ蜻蛉 (CC BY-SA 3.0), 出典: Wikimedia Commons

静岡・東海のリミナルスペースは「移動のための空間」と「作られた風景」に多い

静岡・東海で見つかるリミナルスペースには、二つの特徴があります。ひとつは、どこかへ向かう途中の空間です。美術館へ上っていく長いエスカレーター、古い駅舎のコンコース、県庁や港のビルの最上階。人の少ない時間には、通り過ぎるためだけの空間の静けさが際立ちます。

もうひとつは、人の手で作られた風景です。斜面に広がる体験型の作品、谷に沿った巨大な建築、湖の底に村が沈んだダム。この記事では、静岡・岐阜・三重で「今、誰でも行けること」を条件に選んだ場所を紹介します。

静岡:光のエスカレーターと、県庁の最上階

熱海のMOA美術館は、1982年に開館しました。入口から山の上の本館まで、高低差48.5mを上下8基のエスカレーターで上っていきます。光の色が変わる長いエスカレーターの通路と、途中にある直径約20mの地下のドームは、行き先の見えない光の中を延々と移動していく空間になっています。

1996年に完成した静岡県庁別館の最上階、21階には展望ロビーがあります。予約も受付もなしで誰でも無料で上がれ、晴れた日には富士山や駿河湾が見えます。平日の夕方など人の少ない時間には、役所らしい飾り気のない内装と、窓一面の景色だけが妙に静かに広がります。

岐阜:平衡感覚がずれる作品と、谷の中の巨大な建築

養老天命反転地は、美術家の荒川修作とマドリン・ギンズが構想し、1995年に開園した体験型の作品です。すり鉢状の地面に、傾いた壁や曲がりくねった148本の通路、5つの日本列島の模型が広がり、歩いているうちに平衡感覚が少しずつずれていきます。人の少ない時間に斜面を歩いていると、夢の中の地形に迷い込んだように感じます。

多治見市のセラミックパークMINOは、2002年に開館した陶磁器の複合施設です。磯崎新アトリエ・熊谷建築設計室の設計で、石とタイルで覆われた巨大な建物と広場、長い通路が丘陵の谷に沿って広がります。催しのない日にはほとんど人がおらず、建物だけが残った遺跡のような静けさがあります。

岐阜の繁華街のアーケードと、湖に沈んだ村

岐阜市の柳ケ瀬は、昭和の歌謡曲「柳ヶ瀬ブルース」で全国に名を知られた繁華街です。1960年に柳ケ瀬通りに県内で初めての全天候型アーケードが架けられました。百貨店が去ったあと、シャッターの目立つ長い屋根の下に、昼でも薄暗い通りが続いています。北側の一部のアーケードは、老朽化のため10年ほどかけて撤去される予定です。

揖斐川町の徳山ダムは、2008年に完成したダムです。その湖の底には、かつての徳山村の集落が沈んでいます。水位が下がる時期には、集落があった土地の輪郭がうっすらと湖面から姿を見せることがあります。静かな湖面の下に、かつての暮らしの跡が眠っています。

三重:工場の光を見下ろす展望室と、昭和の駅舎

四日市港ポートビルは、四日市港の開港100周年を記念して1999年に建てられた高さ100mのビルです。14階の展望展示室「うみてらす14」からは、地上約90mの窓の外に港と石油化学コンビナートが広がり、夜は工場群の光だけが静かにまたたきます。平日の展望室は人が少なく、働き続ける工場を見下ろす誰もいない部屋になります。

伊勢の近鉄・宇治山田駅は、1931年に開業した駅です。設計は久野節で、幅128mの外壁はクリーム色のテラコッタのタイルで覆われ、屋根にはスペイン瓦が載ります。国の登録有形文化財で、今も駅として使われています。伊勢参りの人の波が引いた夜、天井の高いコンコースには、いつの時代なのか分からなくなるような静けさが残ります。

近鉄宇治山田駅の駅舎。クリーム色の横長の建物と塔
近鉄宇治山田駅。1931年に開業した駅舎が、今も駅として使われている。 写真: Qurren (CC BY-SA 4.0), 出典: Wikimedia Commons

行くときの、現実的な注意点

県庁や駅、商店街は、今も人が働き、使っている場所です。撮影するときは、職員や乗客、通る人の顔が写らないように気をつけてください。MOA美術館では、フラッシュや三脚、自撮り棒が館内すべてで禁止されています。

静岡県庁の展望ロビーは毎月第3土曜とその翌日の日曜が休館です。養老天命反転地には斜面やくぼ地があるので、歩きやすい靴で出かけてください。柳ケ瀬のアーケードは、これから少しずつ撤去される予定です。徳山ダムの周辺は冬に雪で通れなくなる道があります。

撮ったら、地図に残してください

静岡・東海には、まだ記録されていない古い駅舎や、人の手で作られた不思議な風景がたくさんあります。いつも使う駅のコンコースも、夜遅くに歩くと別の場所に見えるかもしれません。

LIMapは、そうした場所を写真と位置つきで残していく地図です。見つけた場所があれば、ぜひ登録してください。

よくある質問

静岡で無料で行ける場所はありますか?

静岡県庁別館21階の富士山展望ロビーは、予約も受付もなしで無料で上がれます。JR静岡駅北口から歩いて約15分で、平日は8:30から18:00、土日祝は10:00から18:00まで開いています。

有料の場所はいくらかかりますか?

MOA美術館は一般2,000円、養老天命反転地は大人850円、四日市港ポートビルのうみてらす14は一般310円です。柳ケ瀬のアーケード、セラミックパークMINOの屋外の広場、宇治山田駅の改札の外のコンコースは無料で歩けます。

柳ケ瀬のアーケードはなくなるのですか?

北側の一部のアーケードを、老朽化のため10年ほどかけて撤去する方針が2025年に報道されています。今はまだ残っていますが、行く前に最新の状況を確かめてください。

気になるリミナルスペースを見つけたら

写真と場所をLIMapに記録して、同じ感覚を持つ人たちと共有しましょう。

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