名古屋のリミナルスペース——地下街から昭和の庁舎まで、実在する8か所

名古屋には、同じ景色がどこまでも続く地下街や、長い廊下をもつ古い公共建築が、今も日常の中で使われています。人の少ない時間に訪れると、見慣れたはずの場所が急に知らない場所に見える。LIMapに登録した、誰でも行ける8か所を紹介します。

伏見地下街の通路。緑色の天井と市松模様の床が奥まで続く
伏見地下街。1957年の開業当時の空気を残す、一直線の地下通路。 写真: Kiyok (CC BY-SA 3.0), 出典: Wikimedia Commons

名古屋のリミナルスペースは「地下」と「古い公共建築」に多い

名古屋で見つかるリミナルスペースには、二つの特徴があります。ひとつは地下街です。名古屋駅や栄、伏見の地下には、昭和30年代から続く地下街が網の目のように広がり、同じ幅の通路と同じような店先が延々と続きます。

もうひとつは、昭和のはじめに建てられ、今も使われている公共建築です。長い廊下、同じ形の窓と扉、大理石の階段。役所や旧裁判所の中には、人の少ない時間にだけ現れる静けさがあります。この記事では、どれも「今、誰でも行けること」を条件に選んでいます。

地下街:一直線の伏見と、カーブするサンロード

伏見地下街(長者町地下街)は、地下鉄伏見駅から東へ一直線にのびる、全長240mの細長い地下街です。1957年、地上の長者町繊維街と駅を結ぶ地下の問屋街として生まれました。店が通路の片側にしか並ばず、黄緑と橙に塗られた壁とむき出しの配管が、開業当時の空気を残しています。

名駅地下街サンロードは、同じ1957年の3月に開業した、名古屋でいちばん古い地下街です。地下鉄東山線と一緒に造られたため、開業当時の通路は線路に沿って大きくカーブしています。先の見えない曲がった通路に同じような店先が続き、人の少ない時間には、どこまで歩いても同じ場所にいるような感覚になります。

昭和の公共建築:100mの廊下と、赤レンガの旧裁判所

名古屋市役所本庁舎は、1933年に完成し、今も使われている市庁舎です。2014年に、隣の愛知県庁本庁舎とともに国の重要文化財に指定されました。北側の廊下は全長約100m。同じ窓と扉がどこまでも並ぶ景色は、映画やドラマの撮影にも使われています。平日の開庁時間なら、廊下や階段などの共用部分を見学できます。

近くの名古屋市市政資料館は、1922年に裁判所として建てられた赤レンガの建物です。1979年まで裁判所として使われ、今は市の資料館として無料で公開されています。大理石とステンドグラスの中央階段、再現された法廷、同じ扉が並ぶ廊下。役目を終えた建物の静けさが、館内に満ちています。

名古屋市役所本庁舎2階の廊下
名古屋市役所本庁舎の廊下。同じ窓と扉がどこまでも続く。 写真: 円周率3パーセント (CC BY-SA 4.0), 出典: Wikimedia Commons

水の屋根と、森の中の展望塔

栄のオアシス21は、公園とバスターミナルと商業施設が一体になった立体公園で、2002年に開業しました。ガラスの大屋根「水の宇宙船」の上には薄く水が張られ、その下の吹き抜けの広場に光の模様が揺れます。朝早くや夜遅く、人のいない広場に立つと、昔思い描かれた未来の風景に取り残されたような気分になります。

東山スカイタワーは、東山公園の丘の上に立つ、高さ134mの展望塔です。名古屋市制100周年を記念して1989年に開業しました。駅から森の中の遊歩道を歩いてたどり着き、地上100mの展望室から街の明かりを見下ろす。平日の夜には、人影のまばらな静かな時間が流れます。

博覧会の名残と、朝のアーケード

鶴舞公園は、1909年に開かれた名古屋市で最初の公園です。その中心に立つ噴水塔は、翌1910年にこの公園で開かれた博覧会(第10回関西府県連合共進会)にあわせて造られました。地下鉄工事のため1973年にいったん解体されましたが、1977年に元の姿で復元されています。朝早く、円く並んだ列柱のまわりに誰もいないと、博覧会が終わった会場だけが残されたように見えます。

名古屋駅の東、那古野の円頓寺商店街は、江戸時代から続く商店街です。アーケードは1964年に架けられ、2015年に改修されました。日中はにぎわいますが、店が開く前の早朝には、長いアーケードの下にシャッターと看板だけが並ぶ、静かな通り抜けの空間になります。

行くときの、現実的な注意点

地下街や商店街は、お店や通る人の生活の場です。撮影するときはお店や人の顔が写らないように気をつけ、通行の邪魔にならないようにしてください。伏見地下街は通れる時間が決まっていて、日曜・祝日は通れないことが多いので、事前に確認しておくと安心です。

名古屋市役所本庁舎の見学は、平日の開庁時間に、廊下や階段などの共用部分に限られます。職員や来庁者が写らないように撮影することが、市の見学のルールになっています。東山スカイタワーへの道は森の遊歩道を通るので、夕方以降に歩くときは気をつけてください。

撮ったら、地図に残してください

名古屋には、まだ記録されていない地下通路や古い建物がたくさんあります。毎日通る乗り換えの通路が、誰かにとっての探していた景色かもしれません。

LIMapは、そうした場所を写真と位置つきで残していく地図です。見つけた場所があれば、ぜひ登録してください。

よくある質問

名古屋で手軽にリミナルスペースを感じられる場所は?

名古屋駅や栄、伏見の地下街がおすすめです。1957年に開業した伏見地下街や名駅地下街サンロードは、駅から直接入れて、同じような通路が長く続く、名古屋らしいリミナルスペースです。

名古屋市役所の中は見学できますか?

平日の開庁時間(8:45〜17:15)であれば、廊下や階段などの共用部分を見学できます。執務室などには入れません。職員や来庁者が写らないように撮影するのが、市の見学のルールです。

無料で入れる場所はありますか?

名古屋市市政資料館は入館無料で、1922年に建てられた旧裁判所の中を見学できます。鶴舞公園は24時間無料で入れ、地下街や円頓寺商店街も自由に歩けます。

気になるリミナルスペースを見つけたら

写真と場所をLIMapに記録して、同じ感覚を持つ人たちと共有しましょう。

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