九州のリミナルスペース——海底の歩行者トンネルから昭和の鉄塔まで、実在する9か所

九州には、海の下をまっすぐ歩いて渡るトンネルや、照明を落とした地下街、昭和の港に立つ鉄塔が、今も誰でも行ける場所として残されています。人の少ない時間に訪れると、見慣れたはずの移動の途中が、急に知らない場所に見えてきます。LIMapに登録した9か所を紹介します。

関門トンネル人道。蛍光灯に照らされた通路が、先が見えないほどまっすぐ続く
関門トンネル人道。海の下を、約780mの通路がまっすぐ延びる。 写真: Tzuhsun Hsu from Taipei, Taiwan (CC BY-SA 2.0), 出典: Wikimedia Commons

九州のリミナルスペースは「海の下と地下」と「港の塔」に多い

九州で見つかるリミナルスペースには、二つの特徴があります。ひとつは、海の下や地下を通る長い通路です。本州と九州を結ぶ歩行者用の海底トンネルや、福岡・天神の地下街では、同じ景色の通路がどこまでも続きます。

もうひとつは、港や海辺に立つ塔や乗り物です。昭和の鉄塔、平成のはじめの博覧会の塔、大きな橋の下を行き来する渡し船。この記事では、福岡・北九州・長崎で「今、誰でも行けること」を条件に選んだ場所を中心に、役目を終えた炭鉱や鉄道の遺構も紹介します。

海の下と地下:780mの人道トンネルと、照明を抑えた地下街

関門トンネル人道は、北九州市門司区と山口県下関市を海の下で結ぶ、歩く人のためのトンネルです。1958年に車道と同時に開通しました。エレベーターで地下約60mまで下りると、蛍光灯に照らされた約780mの通路が、先が見えないほどまっすぐ延びています。途中の床には福岡県と山口県の県境の線が引かれています。歩行者は無料で、6:00から22:00まで通れます。

福岡の天神地下街は、1976年に開業した約590mの地下街です。19世紀のヨーロッパをイメージした石畳の床と唐草模様の鉄の天井が続き、通路の照明はあえて暗めに抑えられています。店が閉まったあとや開く前の人のいない通路は、どこにも存在しない街の路地に迷い込んだように見えます。

天神地下街の広場。石畳の床と、唐草模様の暗い天井
天神地下街。照明を抑えた通路に、石畳と唐草模様の天井が続く。 写真: MaedaAkihiko (CC BY-SA 4.0), 出典: Wikimedia Commons

港の塔:昭和の赤い鉄塔と、鏡で覆われたタワー

博多ふ頭に立つ博多ポートタワーは、1964年に開業した高さ100mの赤い鉄塔で、東京タワーと同じ内藤多仲が設計しました。地上70mの円い展望室には無料で上がることができます。人の少ない時間には、港の明かりに囲まれた昭和の部屋だけが静かに浮かんでいます。

百道浜の福岡タワーは、1989年のアジア太平洋博覧会(よかトピア)のモニュメントとして建てられた、高さ234mのタワーです。外側は約8000枚のハーフミラーで覆われています。地上123mの展望室は、夜になると窓に室内が映り込み、海と街と自分の姿の境目があいまいになります。

橋の下の渡し船と、斜めに上るエレベーター

北九州の若戸渡船は、洞海湾をはさんだ若松と戸畑を片道約3分で結ぶ小さな渡し船です。明治のころから続き、1962年に真上に若戸大橋が架かったあとも、市民の要望で運航が続けられてきました。大人100円。巨大な赤い橋の下を小さな船が行き来する景色には、時代の流れから少しだけ外れたような空気があります。

長崎のグラバースカイロードは、南山手の斜面を斜めに上っていくエレベーターです。2002年に市道の一部として造られ、誰でも無料で乗ることができます。丸い窓のついた箱が、港と斜面の家並みを見下ろしながら静かに上っていく。道路とも乗り物ともつかない、坂の街ならではの通路です。

役目を終えた炭鉱と鉄道:竪坑櫓、渓谷の鉄橋、軍艦島

福岡県志免町の旧志免鉱業所竪坑櫓は、1943年に完成した高さ47.65mの鉄筋コンクリートの塔です。海軍の炭鉱の坑口として建てられ、戦後は国鉄の炭鉱として使われたのち、1964年に閉山しました。国の重要文化財で、周りは公園として整備されています。住宅街の中に、巨大なコンクリートの塊だけが唐突にそびえています。

宮崎県の高千穂橋梁は、河底から高さ105mの鉄道橋です。2005年の台風で高千穂鉄道が不通になり、2008年に橋を含む区間が廃止されましたが、今は「高千穂あまてらす鉄道」のカートで橋の上まで行くことができます。長崎港の沖の端島(軍艦島)は、1974年の閉山で無人島になった炭鉱の島で、2015年に世界文化遺産の構成資産になりました。上陸できるのは見学ツアーだけです。

行くときの、現実的な注意点

地下街や渡し船、斜行エレベーターは、人が毎日使う場所です。撮影するときは店や通る人、乗る人の顔が写らないように気をつけ、通行の邪魔にならないようにしてください。グラバースカイロードの周りは住宅地なので、家や住民を写さない配慮が必要です。天神地下街では、仕事としての撮影には事前の申請が求められています。

関門トンネル人道は22時から翌朝6時までは通れません。若戸渡船は天候で運休することがあり、グラバースカイロードも補修工事で運休する日があります。旧志免鉱業所竪坑櫓の中には入れないので、公園から外観を眺めてください。軍艦島は個人では上陸できません。

撮ったら、地図に残してください

九州には、まだ記録されていない地下通路や、港の古い建物がたくさんあります。毎日通る乗り換えの通路が、誰かにとっての探していた景色かもしれません。

LIMapは、そうした場所を写真と位置つきで残していく地図です。見つけた場所があれば、ぜひ登録してください。

よくある質問

福岡で手軽にリミナルスペースを感じられる場所は?

天神地下街がおすすめです。地下鉄の天神駅・天神南駅と直結していて、通路は朝5:30から深夜まで開いています。照明を抑えた石畳の通路が長く続き、店が閉まったあとや開く前の時間はとくに人が少なくなります。

関門トンネル人道は歩いて渡れますか?

はい。歩行者は無料で、6:00から22:00まで通れます。門司側は西鉄バス「関門トンネル人道口」バス停のすぐ前に入口があり、エレベーターで地下に下ります。通路の長さは約780mで、途中の床に福岡県と山口県の県境の表示があります。

無料で入れる場所はありますか?

関門トンネル人道(歩行者)、天神地下街の通路、博多ポートタワーの展望室、グラバースカイロードは無料です。若戸渡船は大人100円、福岡タワーの展望室は大人1,000円です。

気になるリミナルスペースを見つけたら

写真と場所をLIMapに記録して、同じ感覚を持つ人たちと共有しましょう。

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