北陸・甲信越のリミナルスペース——明治の鉄道トンネルから丸窓の図書館まで、実在する8か所
北陸・甲信越には、役目を終えたあと歩いて通れるようになったトンネルや、白く開かれた現代の図書館や美術館が、今も誰でも行ける場所としてあります。人の少ない時間に訪れると、長く続く通路や広い空間の中に、どこへ向かう途中なのか分からなくなるような静けさが見えてきます。LIMapに登録した8か所を紹介します。
北陸・甲信越のリミナルスペースは「歩いて抜けるトンネル」と「白く開かれた建築」に多い
北陸・甲信越で見つかるリミナルスペースには、二つの特徴があります。ひとつは、歩いて抜けるための長いトンネルです。明治の鉄道トンネルが遊歩道になり、山の中を掘り進んだ観光用のトンネルが芸術作品として改修されています。照明が続くだけの一直線の通路は、終わりが見えないほど長く感じられます。
もうひとつは、平成以降に建てられた白く開かれた公共建築です。丸窓の並ぶ図書館、円形のガラスの美術館、駅とつながった文化施設。人の少ない時間には、使い道の決まっていない広い空間だけが残ります。この記事では、山梨・新潟・石川・富山・長野で「今、誰でも行けること」を条件に選んだ場所を紹介します。
二本のトンネル:明治の鉄道トンネルと、光の通路
山梨県甲州市の大日影トンネル遊歩道は、1903年に開通した中央本線の鉄道トンネルです。1997年に隣に新しいトンネルができて使われなくなり、今は全長約1.4kmの遊歩道として無料で歩けます。レンガの壁と蒸気機関車の煤、レールや標識が当時のまま残り、照明が等間隔に続く一直線の通路を、片道約30分かけて歩いていきます。
新潟県十日町市の清津峡渓谷トンネルは、落石事故で通れなくなった渓谷の遊歩道の代わりに、1996年に造られた全長750mの歩行者用トンネルです。2018年の大地の芸術祭で、マ・ヤンソン/MADアーキテクツの作品「Tunnel of Light」として改修されました。色の変わる照明が続く長い通路の先、終点では水を張った床に渓谷が鏡のように映ります。
金沢:丸窓の白い箱と、円形のガラスの美術館
金沢海みらい図書館は、2011年に開館したシーラカンスK&H設計の図書館です。白い箱のような外壁に約6,000個の丸窓が並び、天井の高い大きな空間に、点のような光が静かに落ちてきます。郊外の広い空の下に置かれた白い箱は、外から眺めても、現実から少し離れた建物に見えます。館内の撮影には許可が必要です。
金沢21世紀美術館は、2004年に開館したSANAA設計の美術館です。直径112.5mの円形のガラスの建物の中を、白い通路と中庭が迷路のようにつなぎます。無料の交流ゾーンは夜22時まで開いていて、人の減った夜には、どちらが表でどちらが裏なのか分からなくなります。
富山と新潟:糸電話の橋と、無料の展望室
富山駅の北にある富岩運河環水公園は、運河の船だまりの跡に1997年に開かれた、水辺の人工的な公園です。天門橋の両端には高さ約20mの展望塔が立ち、塔と塔は「赤い糸電話」でつながっています。夜や早朝、人のいない水面に橋の明かりだけが映る時間には、誰かのために用意されたまま忘れられた舞台のような静けさがあります。
新潟港に面した朱鷺メッセの万代島ビル31階には、地上約125mの無料の展望室があります。夜になると、ガラスに囲まれた静かなフロアから、街の灯りと暗い日本海だけが見えます。人の少ない夜の展望室は、どこへも向かわない待合室のように静まり返ります。
駅とつながる文化施設と、佐渡の選鉱場跡
長野県の茅野市民館は、2005年に開館した古谷誠章設計の文化施設です。茅野駅の橋上駅舎から通路がそのまま建物の中へ続き、駅と建物の境目がはっきりしません。駅のホームに沿って細長く延びる図書室は全面ガラス張りで、列車を待つ場所と本を読む場所が一枚のガラスを隔てて並んでいます。
佐渡島の北沢浮遊選鉱場跡は、佐渡金山の鉱石を処理した選鉱場の跡です。1937年から1940年にかけて整備され、1952年に廃止されました。今は山の斜面に階段状のコンクリートの躯体と、直径50mのシックナーが残り、「佐渡島のラピュタ」とも呼ばれています。前の広場は整備されていて、誰でも近くから眺められます。
行くときの、現実的な注意点
図書館や美術館、文化施設は、人が利用している場所です。金沢海みらい図書館は館内の撮影に許可証が必要で、図書コーナーは撮影できません。金沢21世紀美術館ではフラッシュや三脚、自撮り棒が禁止されています。どこでも、ほかの利用者の顔が写らないように気をつけてください。
大日影トンネル遊歩道は9時から16時まで、片道約30分かかります。清津峡渓谷トンネルは連休などに予約制の日があり、冬は雪で休むことがあります。金沢21世紀美術館は2027年5月から大規模修繕のため休館する予定です。北沢浮遊選鉱場跡の遺構は老朽化しているので、立ち入り禁止の場所には入らないでください。
撮ったら、地図に残してください
北陸・甲信越には、まだ記録されていないトンネルや、白く静かな公共建築がたくさんあります。雪の日にしか見えない景色も少なくありません。
LIMapは、そうした場所を写真と位置つきで残していく地図です。見つけた場所があれば、ぜひ登録してください。
よくある質問
大日影トンネル遊歩道は誰でも歩けますか?
はい。9:00から16:00まで無料で歩けます(年末年始は休み)。JR中央本線の勝沼ぶどう郷駅から歩いて約5分で、トンネルの長さは約1.4km、片道約30分かかります。
無料で入れる場所はありますか?
大日影トンネル遊歩道、環水公園の天門橋の展望塔、朱鷺メッセの展望室、金沢海みらい図書館、金沢21世紀美術館の交流ゾーンは無料です。清津峡渓谷トンネルは有料(一般1,200円、冬季1,000円)です。
清津峡渓谷トンネルは予約が必要ですか?
連休などの混み合う日だけ予約制になります。予約が必要な日は公式サイトで案内されています。人の少ない写真を撮りたいなら、平日の朝がおすすめです。
この記事が、あなたの知らない場所への入口になっていれば幸いです。
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