中国・四国のリミナルスペース——丹下健三の県庁舎から廃線跡まで、実在する9か所

中国・四国には、戦後に建てられて今も使われている公共建築や、列車が来なくなったあとも残された駅と線路が、誰でも行ける場所としてあります。人の少ない時間に訪れると、使われている場所と使われなくなった場所の両方に、同じような静けさが流れていることに気づきます。LIMapに登録した9か所を紹介します。

香川県庁舎東館の1階ロビー。タイルの壁画と木のベンチが並ぶ
香川県庁舎東館の1階ロビー。猪熊弦一郎の壁画が今も残る。 写真: Wiiii (CC BY-SA 3.0), 出典: Wikimedia Commons

中国・四国のリミナルスペースは「戦後の公共建築」と「役目を終えた鉄道」に多い

中国・四国で見つかるリミナルスペースには、二つの特徴があります。ひとつは、戦後から平成にかけて建てられた公共建築や通路です。県庁舎のピロティ、ごみ処理工場の見学通路、長いアーケード。人の少ない時間には、大きく開かれた空間だけが残ります。

もうひとつは、役目を終えた鉄道です。廃止された路線の終着駅、蒸気機関車の時代の設備が残る終着駅、線路の上を竹林が覆う廃線跡。この記事では、香川・広島・島根・鳥取・徳島・愛媛で「今、誰でも行けること」を条件に選んだ場所を紹介します。

高松:約2.7kmのアーケードと、丹下健三の県庁舎

高松中央商店街は、8つの商店街がつながり、総延長約2.7kmにわたってアーケードが続く商店街です。丸亀町の北の端には、高さ32.2mのガラスのドームがかかる広場があります。店のシャッターが下りた早朝や夜には、明るい屋根の下に人のいない通りがどこまでも延び、大きなドームの下の広場がかえって空っぽさを際立たせます。

香川県庁舎東館は、1958年に完成した丹下健三設計の県庁舎です。2022年に、戦後の庁舎建築として初めて国の重要文化財に指定されました。打ち放しコンクリートの柱が並ぶピロティと1階のロビーには猪熊弦一郎の壁画があり、平日の開庁時間には誰でも見学できます。人の少ない時間のロビーには、戦後に思い描かれた「開かれた役所」の空気が静かに漂っています。

広島:ごみ処理工場を突き抜ける通路と、十字の地下街

広島市環境局中工場は、2004年に完成した谷口吉生設計のごみ処理工場です。平和記念公園から海へ向かう軸線が建物の中を突き抜けるように設計されていて、誰でも入れるガラス張りの見学空間「エコリアム」を通り、動いている設備を見下ろしながら海の見える側へ歩いて抜けられます。予約なしで9:00から16:30まで見学できます。

紙屋町シャレオは、広島の中心、紙屋町交差点の地下を十字に走る地下街で、2001年に開業しました。店が開く前や閉まったあとには、明るい照明だけが残る長い通路と広場が、行き先の分からない地下の空間になります。

広島市環境局中工場を突き抜ける、まっすぐな通路
広島市環境局中工場。まっすぐな通路が、工場を突き抜けて海の方へ延びる。 写真: Taisyo (CC BY-SA 3.0), 出典: Wikimedia Commons

役目を終えた駅と線路:旧大社駅、若桜駅、倉吉線

島根県出雲市の旧大社駅は、1990年に廃止された旧国鉄大社線の終着駅です。1924年に建てられた、出雲大社を思わせる和風の木造駅舎は国の重要文化財で、ホームや蒸気機関車D51もそのまま残されています。保存修理を終えて2026年4月に公開が再開されました。列車が二度と来ないホームに立つと、時間が途中で止まったように感じます。

鳥取県の若桜駅は、1930年に開業した若桜鉄道の終着駅で、中国地方でいちばん東にある駅です。線路の奥には手回しの転車台や給水塔、給炭台、蒸気機関車C12が残っています。同じ鳥取県の旧国鉄倉吉線は1985年に廃止されましたが、関金から山守にかけての廃線跡が整備され、竹林に覆われたレールの上を歩くことができます。

山の上へ:ビルの中の駅から出るロープウェイと、山の中の鉱山の町の跡

徳島の眉山ロープウェイは、1957年に開業しました。山麓駅は阿波おどり会館の建物の中にあり、ビルの上の階から乗り込むと、約6分で標高290mの山頂に着きます。ビルの中の駅と、人の少ない夕方の山頂駅は、どこへ向かう途中なのか分からなくなるような場所です。

愛媛県新居浜市の旧別子銅山 東平地区は、大正から昭和のはじめにかけて採鉱本部が置かれた山の中の町の跡で、「東洋のマチュピチュ」とも呼ばれます。赤レンガや石積みの貯鉱庫、インクラインの跡が急な斜面に残り、霧の出た朝には、どこか遠い国の遺跡に迷い込んだように見えます。

行くときの、現実的な注意点

県庁舎、ごみ処理工場、アーケード、地下街、駅は、どれも今も人が働き、使っている場所です。撮影するときは、職員や通る人の顔が写らないように気をつけてください。香川県庁舎東館の見学は平日の開庁時間に限られ、中工場の工場内部の見学には予約が必要です。若桜駅の構内の奥を見学するときは、窓口で入構券を買い、係員の指示に従ってください。

旧大社駅は2026年4月の公開再開から有料になりました。眉山ロープウェイは年に一度、検査のため運休する期間があります。倉吉線の廃線跡や東平のような山あいの場所は、足元が悪いところもあるので、歩きやすい靴で出かけてください。

撮ったら、地図に残してください

中国・四国には、まだ記録されていない戦後の公共建築や、役目を終えた駅がたくさんあります。いつも通るアーケードや地下街も、朝早くに歩くと別の場所に見えるかもしれません。

LIMapは、そうした場所を写真と位置つきで残していく地図です。見つけた場所があれば、ぜひ登録してください。

よくある質問

香川県庁舎東館は誰でも見学できますか?

はい。ピロティや1階ロビーなどの共用部分は、平日の開庁時間(8:30〜17:15)に自由に見学できます。執務室には入れません。今も使われている県庁舎なので、職員や来庁者を写さないように気をつけてください。

無料で入れる場所はありますか?

高松中央商店街のアーケード、香川県庁舎東館の共用部分、広島市環境局中工場のエコリアム、紙屋町シャレオの通路、倉吉線の廃線跡は無料で歩けます。旧大社駅は一般300円、若桜駅の構内見学は入構券300円、眉山ロープウェイは往復1,500円です。

旧大社駅は今も見学できますか?

はい。保存修理工事を終えて、2026年4月に公開が再開されました。9:00〜16:30で、水曜は休館です。再開後は有料(一般300円)になっています。

気になるリミナルスペースを見つけたら

写真と場所をLIMapに記録して、同じ感覚を持つ人たちと共有しましょう。

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