アナログホラーとは?意味と特徴、代表作と見るときの注意

砂嵐の画面、色あせた天気予報、突然切り替わる緊急放送。アナログホラーは、古いテレビ放送やビデオテープの粗い質感を使って、じわじわと恐怖を描くジャンルです。YouTube の自主制作から生まれ、2026年には映画『バックルームズ』が世界的なヒットになりました。特徴と代表作、見るときの注意を整理します。

廃墟に置き去りにされた、画面の割れた古いテレビ
廃墟に残された古いテレビ。アナログホラーは、こうした古いメディアの質感を使って恐怖を描く。 写真: Tiia Monto (CC BY-SA 3.0), 出典: Wikimedia Commons

アナログホラーとは

アナログホラーは、古いテレビ放送やビデオ映像の、粗く不気味な質感を生かして恐怖を描く手法です。多くは YouTube で無料で公開される、個人や少人数による短い連作です。映像の粒子やノイズ、砂嵐、画面の揺れといったアナログビデオ特有の傷を、デジタルの道具でわざと作り、昔のテレビと同じ4:3の画面で見せます。

体裁には、テレビ局の放送、研修用のビデオ、ドキュメンタリー、子ども番組などがよく使われます。合成音声のナレーションや、どこかで見たような素材映像が使われることも多く、本物の古い記録のように見えることが、怖さの土台になっています。

よく使われる手法

アナログホラーの多くは、何でもない映像から始まり、少しずつ不穏になっていきます。登場人物がほとんどおらず、画面のこちら側にいる視聴者自身が狙われているように感じさせる作りや、緊急放送の形式で放送が乗っ取られる演出がよく使われます。劇伴の音楽を使わず、結末をはっきり示さないことも特徴です。

YouTube の公式ブログによると、2024年の1月から8月だけで、アナログホラーの動画は5億回以上再生されました。同じブログは、よく使われる手法のひとつとして「リミナルスペースをさまよう」ことを挙げています。

代表的な作品

ジャンルの型を作ったとされるのが、クリス・ストラウブの『Local 58』(2015年〜)です。架空の地方テレビ局の放送が、何十年にもわたって何者かに乗っ取られていく体裁の作品で、「アナログホラー」という呼び名は、この作品のキャッチコピーから広まったとされます。

カナダのレミー・アボードによる『Gemini Home Entertainment』(2019年〜)は、古いビデオテープのオムニバスの体裁をとります。アレックス・キスターの『The Mandela Catalogue』(2021年〜)は、人の姿をまねる存在が出てくる、架空の郡を舞台にした連作です。2020年に始まった『The Walten Files』のように、ゲームの影響を受けた作品もあります。

そして2022年、当時16歳のケイン・パーソンズ(Kane Pixels)が、バックルームズを題材にした連作を公開しました。アナログホラーとリミナルスペースを結びつけたこの作品が、のちの映画化につながります。

どこから来たのか

本物の記録映像のように見せて怖がらせる手法には、先例があります。1992年にイギリスの BBC が放送したテレビ映画『Ghostwatch』は、生放送の心霊番組の体裁をとった作品で、アナログホラーの先駆けとして挙げられます。手持ちカメラの映像を記録として見せる「ファウンド・フッテージ」の映画も、近い流れです。

ネットの怪談、いわゆるクリーピーパスタの影響も指摘されます。『Local 58』の作者ストラウブは、2009年に、子どもの頃に見たはずの奇妙な番組をめぐる怪談「Candle Cove」を書いていて、この作品はのちにアメリカでドラマにもなりました。

YouTube から映画館へ

ケイン・パーソンズが監督した A24 の映画『バックルームズ』は、2026年5月にアメリカで公開され、A24 の作品として過去最高の興行収入を記録しました。日本では2026年9月4日に公開されています。日本の宣伝では「リミナルスペース」という言葉が前面に出ていました。

2026年7月には、『The Mandela Catalogue』の映画化も決まりました。スティーヴン・スピルバーグのアンブリンが製作し、作者のキスター本人が監督します。公開は2028年夏と報じられています。

日本では:近い流れとしてのフェイクドキュメンタリー

日本でも、映画情報サイトの映画.com がアナログホラーを紹介するなど、言葉が知られ始めています。一方で、日本で近い表現は「フェイクドキュメンタリー」や「モキュメンタリー」と呼ばれることが多く、YouTube のフェイクドキュメンタリー『Q』や、テレビ東京の「TXQ FICTION」などが話題になりました。

これらは、本物の番組や記録のように見せて不安をかき立てるという点で、アナログホラーと近いところにあります。

リミナルスペースとの関係

アナログホラーとリミナルスペースは、重なり合う隣のジャンルです。リミナルスペースが「人のいない現実の場所」の違和感なら、アナログホラーは「古いメディアの記録」の違和感だと言えます。どちらも、見慣れているはずのものが少しずれていることから、不安と懐かしさを生みます。

人のいない空間を延々と映すアナログホラーの作品は多く、ケイン・パーソンズのバックルームズは、その二つがいちばん深く重なった作品です。

見るときの注意

アナログホラーには、刺激の強い作品があります。たとえば『The Mandela Catalogue』には、自死を思わせる描写や、身体が損なわれる描写が含まれます。苦手な人や、気持ちが落ち込んでいるときは、無理に見ないでください。

見た目が子ども番組でも、中身は大人向けの作品が多いことにも注意が必要です。『Local 58』の「子どものための番組」と題された回は、2022年に YouTube の年齢設定が誤って「子ども向け」に変えられ、作者が異議を申し立てて直したことがあります。

現実の場所で、アナログな時間に触れる

画面の中のアナログな不気味さに近いものは、現実の古い場所にも残っています。千葉県の東成田駅は、1978年に「成田空港駅」として開業した地下の駅で、使われなくなったホームには旧駅名の駅名標や古い広告が残っています。

東成田駅(旧成田空港駅) をLIMapで見る →

池袋の「ロサ会館」は、1968年に開業した総合アミューズメントビルです。入り組んだ通路と古い案内表示が、昭和の娯楽ビルの空気を今に伝えています。LIMapでは、こうした場所を写真と位置つきで記録しています。

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ロサ会館 をLIMapで見る →

よくある質問

アナログホラーとは何ですか?

古いテレビ放送やビデオテープの粗い質感を使って恐怖を描く、YouTube 発のホラーのジャンルです。放送が乗っ取られる体裁や、研修ビデオ・子ども番組の体裁がよく使われます。

代表的な作品は?

クリス・ストラウブの『Local 58』(2015年〜)、レミー・アボードの『Gemini Home Entertainment』(2019年〜)、アレックス・キスターの『The Mandela Catalogue』(2021年〜)、ケイン・パーソンズのバックルームズの連作(2022年〜)などです。

子どもが見ても大丈夫ですか?

作品によりますが、刺激の強い作品が多く、子ども番組のような見た目でも中身は大人向けのものがあります。『The Mandela Catalogue』のように自死を思わせる描写を含む作品もあるので、注意してください。

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