世界のリミナルスペース15選|実在する地下鉄駅・空港・ゴーストタウンを1か所ずつ紹介

人の気配が消えた、どこか懐かしく不気味な場所は、世界中にあります。宇宙をテーマにした地下鉄駅から、未来を描いた空港、誰も暮らさなかった街、砂や水にのまれた町まで。LIMapに登録された海外の場所から15か所を選び、1か所ずつ紹介します。

ストックホルムのソルナ・セントルム駅。赤く塗られた岩の天井の下にエスカレーターが並ぶ
ソルナ・セントルム駅(2015年撮影)。掘った岩盤をそのまま赤く塗った天井が、ホームを覆う。 写真: Pudelek (CC BY-SA 4.0), 出典: Wikimedia Commons

世界のリミナルスペースは、どんな場所か

リミナルスペースは日本だけのものではありません。地下鉄の駅、空港のターミナル、大きすぎる広場、住む人がいないまま残された街。世界中に、「人の気配が消えた、どこか懐かしく不気味な場所」があります。

この記事では、LIMapに登録されている海外の場所から15か所を選び、1か所ずつ紹介します。どれも実在する場所で、紹介する事実は公式サイトや報道などで確かめています。地下鉄駅、空港、建築と街、ゴーストタウンの順に並べました。

多くは今も使われている駅や施設です。人の少ない時間帯を選ぶと、写真で見るような静けさに出会えます。私有地や立入禁止の場所もあるので、それぞれの節に書いた注意も読んでから訪ねてください。

1. コスモナフトラル駅(ウズベキスタン・タシケント)

タシケント地下鉄の駅で、1984年に開業しました。名前はウズベク語で「宇宙飛行士たち」。ホームの壁は、深い青から水色へと少しずつ明るくなる陶板で覆われ、ガガーリンやテレシコワ、天文学者ウルグ・ベクなど、宇宙と天文にかかわる人物の肖像が丸い陶板に描かれて並んでいます。

列車が出ていったあとのホームには、青い壁と肖像だけが残ります。ソ連時代に思い描かれた「宇宙の未来」が、地下の一室にそのまま保存されているような駅です。

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コスモナフトラル駅の壁。濃い青から水色へ移る陶板に駅名が並ぶ
コスモナフトラル駅のホームの壁(2018年撮影)。青い陶板が、宇宙へ向かうように上へ行くほど濃くなる。 写真: Adam Harangozó (CC BY-SA 4.0), 出典: Wikimedia Commons

2. ソルナ・セントルム駅(スウェーデン・ストックホルム近郊)

ストックホルムの地下鉄は、掘った岩盤をそのまま見せ、そこに絵を描いた駅が多いことで知られます。ソルナ市にあるこの駅は1975年に開業し、ごつごつした岩の天井が一面の赤に塗られ、壁にはトウヒの森が延々と描かれています。作者のアンデシュ・オーベリとカール=オーロヴ・ビョルクは、当時のスウェーデンで議論になっていた環境破壊や地方の過疎を題材にしました。

赤い空と黒い森に囲まれたホームは、夕暮れの森の中に駅だけが置かれたようにも見えます。人の少ない時間帯に降りると、地下にいることを忘れそうになります。

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3. トレド駅(イタリア・ナポリ)

ナポリ地下鉄1号線の駅で、2012年に開業しました。設計はスペインの建築家オスカル・トゥスケツ。地上から地下深くまで円錐形の吹き抜けが通り、その内側を青いモザイクが覆っています。吹き抜けにはロバート・ウィルソンの光の作品が組み込まれ、色が少しずつ移り変わります。

長いエスカレーターで青い空間を下っていくと、水の中へ潜っていくような感覚になります。「世界一美しい地下鉄駅」として紹介されることも多い駅ですが、人が途切れた時間の静けさは、むしろ人工の深海に近いものです。

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4. 美麗島駅 光之穹頂(台湾・高雄)

高雄メトロのレッドラインとオレンジラインが交わる乗換駅で、2008年に開業しました。円形のコンコースの天井を、イタリア出身のガラス作家ナルシサス・クアグリアータによるステンドグラス「光之穹頂(光のドーム)」が覆っています。直径は約30メートル、使われたガラスは4,500枚を超えます。

ドームは「水・土・光・火」の4つの主題で、生命の誕生から終わり、再生までを描いています。乗り換えの人の流れが途切れると、色ガラスの光だけが円い床に落ち、巨大な万華鏡の底に立っているような気分になります。

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5. パリ・シャルル・ド・ゴール空港 第1ターミナル(フランス)

シャルル・ド・ゴール空港でいちばん古いターミナルで、1974年に開業しました。建築家ポール・アンドリューが設計した円形のコンクリートの建物で、中央の吹き抜けを、透明なチューブに包まれたエスカレーターが何本も交差しながら渡っていきます。

2023年までに大がかりな改修が行われましたが、円い本体とチューブはそのまま残っています。乗り継ぎ客がまばらな時間には、出口の見えない巨大な装置の中に入り込んだように感じられます。

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6. マドリード・バラハス空港 第4ターミナル(スペイン)

2006年に開業したターミナルで、リチャード・ロジャース・パートナーシップ(現RSHP)とスペインのエストゥディオ・ラメラが設計し、同じ年のRIBAスターリング賞を受けました。竹で仕上げた波打つ天井を、Y字形の鉄骨の柱が支えています。

柱の色は、建物の端から端へ向かって虹のように少しずつ変わっていきます。同じ形の天井と柱がどこまでも続くため、人の少ない時間帯には、自分がどれだけ歩いたのか分からなくなります。

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7. TWAフライトセンター(アメリカ・ニューヨーク)

ジョン・F・ケネディ国際空港にある旧ターミナルで、エーロ・サーリネンの設計により1962年に開業しました。鳥が翼を広げたような薄いコンクリートの屋根と、直線のほとんど無い室内で知られ、赤いカーペット敷きのチューブ状の通路が搭乗口へと続いていました。

2001年に閉鎖されたあと、2019年にホテル「TWAホテル」のロビーとしてよみがえりました。白い曲面の通路を歩いていると、1960年代に思い描かれた未来の中に迷い込んだような気分になります。

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8. イタリア文明宮/四角いコロッセオ(イタリア・ローマ)

ローマ南部の新市街EURに建つ白い直方体の建物です。1942年に予定されていたローマ万国博覧会のために1930年代の終わりから建てられましたが、博覧会は戦争で開かれませんでした。四つの面それぞれに、横9列・縦6段のアーチが同じ形で並んでいます。

どのアーチの奥にも同じ深さの影が落ち、デ・キリコの絵のようだとよく言われます。2015年からはファッションブランドのフェンディが本社として使っていて、内部が公開されるのは展示の会期中だけですが、外観はいつでも見られます。

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9. 芸術科学都市(スペイン・バレンシア)

1957年の大洪水のあと、街の外へ流れを移されたトゥリア川。その旧河床に、1990年代から2000年代にかけて造られた文化施設群です。大半をサンティアゴ・カラトラバが設計し、目の形をしたプラネタリウム、骨格標本のような科学博物館、アーチが並ぶ遊歩道などが細長い敷地に一列に並びます。

建物と建物のあいだには、浅い水盤と白い舗装が大きく広がっています。観光客の多い場所ですが、朝や夕方の人の少ない時間には、未来都市の模型の中に入り込んだような眺めになります。

芸術科学都市(Ciutat de les Arts i les Ciències) をLIMapで見る →

10. オルドス・康巴什(カンバシ)新区(中国・内モンゴル自治区)

オルドス市の新市街で、2000年代に100万人規模の街を見込んで建設が進められました。入居が追いつかず、2009年ごろから「ゴーストタウン」として世界中で報じられましたが、その後は人口が増え、今では10万人以上が暮らしています。

市民広場の周りには、金属の塊のようなオルドス博物館や、大きな図書館、劇場が並びます。どれも巨大で新しいのに、広い舗装面を歩く人はまばらで、完成予想図がそのまま現実になったような景色が広がります。

オルドス・康巴什(カンバシ)新区 市民広場 をLIMapで見る →

11. トロピカル・アイランズ(ドイツ・ベルリン近郊)

ベルリンの南にある、もとは大型の貨物飛行船を造るために建てられた格納庫です。長さ360メートル、高さ107メートルで、柱の無い屋内空間としては世界最大級とされます。飛行船の会社が破綻したあと、2004年に屋内の熱帯リゾートとして生まれ変わりました。

鋼の骨組みの下に砂浜やラグーン、熱帯雨林があり、館内は一年中26度に保たれています。外の季節も天気も届かない人工の楽園は、ネットで語られる「プールルームズ」を現実にしたような場所です。

トロピカル・アイランズ(旧飛行船格納庫) をLIMapで見る →

12. コンソンノ(イタリア・ロンバルディア州)

ミラノの北、ブリアンツァ地方の丘の上にあった小さな村を、1962年に実業家が買い取り、遊びの町に造り替えようとした場所です。ミナレット風の塔やパゴダ、城を模した門、ホテルやダンスホールが建てられましたが、1970年代後半の豪雨による地滑りで町へ続く道がふさがれ、町はさびれていきました。

今は、異国風の塔や柱廊が草木に囲まれて残っています。誰かが思い描いた「楽しい町」の形だけが残り、楽しむ人がいない。リミナルスペースらしさがよく表れた場所です。建物の多くは危険なため柵で囲まれた私有地で、見学できる時間も限られています。決められた範囲から眺めてください。

コンソンノ(Consonno) をLIMapで見る →

13. ブルジュ・アル・ババス(トルコ・ボル県)

トルコ北西部の丘の斜面に、とんがり屋根の小さなお城が何百棟も並んでいます。2014年に別荘地として工事が始まりましたが、開発会社が2018年に経営破綻し、計画732棟のうち建てかけの587棟が残されました。

どの家も同じ形で、同じ間隔で並んでいるため、どの通りに立っても同じ景色が続きます。誰も暮らしたことのない「街の形」だけがある場所です。敷地は柵で囲まれて警備員もいるので、無断では入らず、外から眺めてください。

ブルジュ・アル・ババス(Burj Al Babas) をLIMapで見る →

14. コールマンスコップ(ナミビア)

ナミビア南部の砂漠にある、ドイツ植民地時代の鉱山町の跡です。1908年に近くでダイヤモンドが見つかって町ができ、病院や劇場まで備えるほどにぎわいましたが、より豊かな鉱床が南で見つかると人が去り、1956年には無人になりました。

そのあいだに、ナミブ砂漠の砂が家々の中へ流れ込みました。淡い色に塗られた壁に囲まれた部屋の床が砂の斜面になり、戸口の半分まで砂に埋まっています。立入が制限された区域にあるため、見学には許可が要り、現地のツアーで訪ねます。

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15. ビジャ・エペクエン(アルゼンチン)

塩湖のほとりで湯治とリゾートの町として栄えたエペクエンは、1985年に堤防が切れて湖水にのまれ、何年ものあいだ水の下に沈みました。2000年代の後半に水が引くと、塩で白くなった建物の骨組みと、枯れたまま立つ木々が姿を現しました。

屋根も家具も無く、通りの区画と部屋の仕切りだけが地面に残っています。町の形はあるのに、生活だけが抜き取られた場所です。詳しくは「水に沈んだ場所のリミナルスペース」の記事でも紹介しています。

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訪ねる前に知っておきたいこと

駅や空港、美術館のような場所は、ふだん多くの人が使っています。撮影するときは通行の妨げにならないようにし、ほかの利用者の顔が写り込まないよう気をつけてください。国や施設によっては、撮影に決まりがあることもあります。

コンソンノ、ブルジュ・アル・ババス、コールマンスコップのような廃墟や未完成の街は、私有地だったり、立入が制限されていたりします。公開時間やツアーなど、決められた方法で訪ね、建物の中に無断で入らないでください。古い建物は崩れることもあります。

見つけたら、地図に残してください

LIMapには、この15か所のほかにも海外の場所が100件ほど登録されています。地図を世界まで広げて、気になる場所を探してみてください。日本国内の場所は、地方別の記事で紹介しています。

旅先で、人の気配が消えた不思議な場所に出会ったら、ぜひ写真と位置をLIMapに登録してください。

よくある質問

世界で有名なリミナルスペースはどこですか?

SNSでよく取り上げられるのは、ストックホルムの地下鉄駅(ソルナ・セントルム駅など)、ナポリのトレド駅、パリ・シャルル・ド・ゴール空港の第1ターミナル、トルコのブルジュ・アル・ババス、アルゼンチンのビジャ・エペクエンなどです。この記事ではこれらを含む15か所を紹介しています。

リミナルスペースは実在する場所ですか?

リミナルスペースの写真の多くは、実在する駅・空港・建物などで撮られたものです。この記事で紹介した15か所はすべて実在し、LIMapの地図で位置を確かめられます。一方、「バックルームズ」のように、写真をもとに作られた架空の世界もあります。

紹介されている場所には行けますか?

駅や空港、広場などの多くは自由に訪ねられます。コンソンノやブルジュ・アル・ババスは柵で囲まれた私有地で、コールマンスコップは許可制のツアーで訪ねます。それぞれの節に書いた注意を確かめてから訪ねてください。

気になるリミナルスペースを見つけたら

写真と場所をLIMapに記録して、同じ感覚を持つ人たちと共有しましょう。

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この記事が、あなたの知らない場所への入口になっていれば幸いです。
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